書籍などにもある通り、せかいさんは自身の性格を「社交的ではない」と公言しています。
そんなせかいさんが、飲食店という人前に立つ職業を選んだのはなぜなのでしょうか。
せかいさんは、飲食店にとって社交性は必ずしも必要なものではないと言います。
確かに私も飲食店のコンサルティングをしている中で「お店の繁盛は、味・接客・雰囲気・サービスなど総合的な要素で決まる」ということを、口を酸っぱくして言っています。
そういう意味では、確かに最低限の接客ができていれば他で補う分問題はないのですが、ともすると飲食店コンサルティングをしている私でさえ「やはり接客は重要なのでチカラを入れて・・・」と言ってしまうところを、せかいさんは平然と「仕事はトータル。穴がなければ良い」と言い放つのです。
確かに頭ではわかっているが、そこまで大胆になれるものでしょうか。
それは、せかいさんが業界に染まっていないからこそできたことだとも言えるでしょう。もし中途半端に飲食業界に足を突っ込んでいたら、
(社交的ではない私はお店なんてできるだろうか…)
となっていたかもしれません。業界に対し真っさらであることと持ち前の論理的思考が、この英断を可能にしたのだと思います。
(もっとも、本人は英断などとも思っていないでしょうが…)
私は飲食店のコンサルタントなので、人材育成の仕組み作りを得意としておりますが、実は数値管理や、マーケティングをベースにした集客も得意としております。
せかいさんにお話を伺う中で、個々の戦略にマーケティングの考え方が詰まっていることに気づきました。さぞかしマーケティングを勉強したのだろうなと思い聞いてみたのですが、返ってきた答えは・・・
『特にマーケティングの勉強はしていない』
でした。
マーケティングとは、根本を突き詰めれば「お客様が何を求めているのか」を導き出すことに他なりません。
世の中にはいろいろな本を読んでセミナーに通って人に教わって、やっとなんとか理解できる人間もいる一方、全くそんなことしなくてもマーケティングの胆を実践してしまっているせかいさん。
果たしてせかいさんは根っからのマーケティングセンスの固まりなのでしょうか?
いや、そうではないでしょう。せかいさんは、常に「必要とされているものは何か」ということをとことん考えているのです。むしろ、それこそがマーケティングの本質です。
未来食堂には、「あつらえ」というシステムがあります。
あつらえ・・・その時ある食材から自分好みの一品を作ってくれる、おかずオーダーメードシステム。
このシステムを知った時、私にはこのような疑問が浮かびました。
(お店が混んできた時に、手間がかかるあつらえを注文されたら、どうするのだろう?)
疑問はそのまませかいさんにぶつけます。
すると、いつもの通りこちらの予想外の答えが返ってきました。
「別におかずを作らなくても良い」
意味がわかりませんでした。「あつらえ」という『おかずの』オーダーメードシステムを注文されているのに、おかずを作らないとは何事でしょうか?
しかしその後のせかいさんの一言ですべてが氷解するのです。
「相手に満足してもらうことが大事なんです」
そうです、そもそもあつらえとは、お客様に『満足』してもらうことが目的なのです。
なので、場合によってはわざわざ作らず、相手が求めていると思えば冷蔵庫にあるデザートをお出しすることもあるそうです。
これが、
「お客様が必要としていることを考える」=「マーケティング」
です。
必ずしも決まった形にこだわらず、目的を「お客様が必要としていること」においているからこそできる固定概念の破壊です。
(もっとも、本人は固定概念を破壊しているなどとも思っていないでしょうが…)
失礼ながら、せかいさんには「戦略」という考えはないのかもしれません。
お客様だけでなく、まかないさんに対しても、「相手が何を求めているのか」を突き詰めた結果、洗練された戦略になってしまっているというのが正しい表現かもしれません。
●せかいさんの書籍●
【未来食堂ができるまで】
【ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由】
【やりたいことがある人は未来食堂に来てください 「始める」「続ける」「伝える」の最適解を導く方法】
【誰でもすぐに戦力になれる未来食堂で働きませんか ゆるいつながりで最強のチームをつくる】